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令和5年10月27日金曜日
議会DX推進部会の主催で、「あるべきDXの進め方」と題し、箕面市議会議員を対象に研修会を実施しました。
講師には、本市議会と包括連携協定を締結している株式会社ディー・エヌ・エーの常務執行役で、箕面市DX統括アドバイザーの小林 篤氏と、同じく、株式会社ディー・エヌ・エーメディカル事業本部企画部アソシエイトディレクターで、箕面市DX技術専門官の大脇智洋氏をお迎えしました。
当日は、いまさら聞けない「そもそもDXって何のこと」や「DXを進めるのに必要なこと」などの説明を簡単に受けた後、議員からの率直な質問に対して、講師が実体験を交えて回答する質疑応答時間を多めに取る形式で進め、今後の本市議会のDX推進に大いに参考となる有意義な研修会となりました。
DXの到着点というものが今ひとつ見えていない。民間企業でうまくいった事例を具体的に教えてほしい。
回答
例えばディー・エヌ・エーでは社内のコミュニケーションで「slack」というチャットツールを使用しているが、そこに「NetSuite」という業務システムを入れ込んで、稟議への承認をslackの通知の中で完結できるようにした。ちょっとした変化だが、双方のシステムを行ったり来たりして承認していたときに比べ、1~2分かかっていたものが2~3秒で終わると、日々積み重ねたら結構な時間になる。こうした効率化によって生産性を高めることで、残りの時間をほかで使えるようになるという例だと思う。
箕面市議会でもグループウェアを使われているので、それ自体による効率化もあるが、グループウェアと何かを連携させることで自分たちの効率がさらによくなるというところも上げられる。
DXは単なるデジタル化ではなく、いくつかの段階があることの説明を願う。
回答
箕面市DX推進本部の推進方針の資料では3段階で説明している。アナログからデジタルへ、これがデジタイゼーション(Digitization)で、紙媒体をデジタル化するのが1段階目。2段階目がデジタライゼーション(Digitalization)で、業務のICT化といって、今まで手で入力していたところをRPAなどロボットを使って自走させたり、業務の一部を自動化すること。3段階目がデジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)、これが一般にいうDXで、デジタルによる新しい価値を創造していくということ。例えば、市民からすれば、今まで市役所に来て手続きしていたのをスマートフォン1つで手続きできたり、引っ越したときにいろいろな手続きをしなければいけなかったのが、引っ越しましたと申請するだけで、そこに派生する手続きが一連でできるなど、そういった新しい価値を創造していくということがDXである。
本市のDXは、製造メーカーなどで実施されている改善活動(DT)を経ず、いきなりDXに飛んでいるように見える。DXとDTの違い、また相乗効果を上げるにはどういうあり方がベストなのか。
回答
現状の業務で非効率なままシステムを導入すると、非効率な状態が残り、後でシステム修正が必要になるなど余分な時間とコストがかかる。先に無駄な業務は廃止し、ある程度業務フローをきれいにする、まず改善があって、その先にシステム化・デジタル化という流れが正しい。箕面市でも今ある業務をそのままシステム化するのではなく、まず業務フローを起こして、どこを改善するのか検討し、一旦立ち止まって変更するという形で進められている。
本市議会のデジタル化はどのような印象か。
回答
すでにサイボウズを導入してスケジュールを共有し、タブレットの導入でペーパーレス化もされており、ほかの議会と比べてかなり進んでいると思う。包括連携協定により我々も何か貢献できるかなと思っている。
『顧客のエクスペリエンスの変革』とは具体的にどういうことか。
回答
エクスペリエンスは「体験」などに置き換えられる。民間企業はつくったサービスによって相手にどういう体験や価値を提供できるのかを重要視することが多く、その観点が入っているが、DXは目的意識を持って進めた方がよい。例えば、市役所という観点では、市民は長時間かけて窓口で手続きするより、スマートフォンなどで“隙間”時間で申請できる方がストレスがかからず、「体験」がよりよくなることが『顧客のエクスペリエンスの変革』に当たる。市民が窓口に行く時間をほかに有意義に使えるところ、スマートフォンで申請できるところ、そういうことを含めて『新しい価値の創出』と表現している。
NHK番組『魔改造の夜』では、大手有名企業などの社員たちはデジタル化で業務効率化した上で業務以外の分野の活動として番組に参加し、技術を競い合っているのかなと感じている。こうしたこともDXになるのか。また、目標ありきで効率化していくべきなのか。
回答
この番組はDXとは少し違って、どちらかというと、作り手がワクワクしながら未知の分野に挑戦し、技術力を高めていく、ものづくりを徹底的に楽しむという要素が強いツールかと思う。2点目の目的意識については、目的・ゴール設定は重要で、期間の長いプロジェクトになるほど途中で、これは誰のためにやってるんだっけとあいまいになってくる。ゴールを定めておけば、迷ったときの選択時の指標にもなるので、必ず設定して進めるのが良いと思う。
自治体のDXは相手が市民であり、市民は多様な人がいるし、行政内部の事務作業のDXも進める必要がある。また、推進過程で、どのように費用対効果を検証するのかが大事だと思うので、DXを推進する際の課題とその検証方法について教えてほしい。
回答
(1) 費用対効果は、企業ではROI(Return On Investment)と言ったりするが、それを検証しながら進めるのは実はたいへん難しい。なぜなら、DXを推進すればコストが下がるとは一概に言えず、コストを指標にした結果は出づらい。顧客の「体験」を新しく創ること、例えば市民がスマートフォンで申請できることがどれくらいの価値になるのか、数値化できない定性的な部分に対して、どれくらいそれを保障するのかという意思決定がとても重要になる。実施後にユーザーインタビューの形でアンケートを取って、想定していた感想などが出てくるか否かを計測する手もあるが、どれを比較対象や基準に置くかで変わってくるため、何のためにこれをやるのか、これにそれだけ投資していいのかを一つ一つ見極めながら進めるとよいかと思う。
(2) 一般的には、新しいシステムを導入したとき、どれくらいコストが削減できるのかで投資に対する効果がわかるが、DXの取り組みでは、市民の利便性を高めることで逆に職員の工数が2倍になるとしたら、どちらを取るのか、一番に立てた目標に照らして、どの方向に、何を達成していくのか、総合的に判断することが必要。
議会DXとは、行政に対して効率を上げて我々議員の時間を市民に投じるというイメージなのか、我々から市民に対しての観点で行うものなのか。
回答
【DX推進部会座長から】そこをDX推進部会で議論していきたい。個人的には両方あると思う。議会が担うべき役割や果たすべき役割を最大化するための一つの取り組みがDXになるのではないか。議会が市民ニーズをどう市政に反映させていくのかをより達成できることが議会DXかなと思う。
(1) 自分のイメージでは、議会とは、いろいろな立場のかたやいろいろな市民の意見を聞いた議員が代表として議論されるところだと思っている。最近はチャットGPTのような議論できるツールがあるので、二つの立場に立たせて議論を深めさせることで議論の前段階をシステム的に処理し、議員どうしは本当に議論を深めるべき部分に焦点を当てて意思決定までの時間を短くするなど、そんな使い方もできれば議会DXの一つのテーマとして面白いと思う。
(2) ディー・エヌ・エーでは何でもミーティングで決めるのではなく、チャットツールのslackを活用して、論点やそれに対する意見のやり取りをした後に、Zoomのリモートミーティングなどで30分くらいで結論までパッと組み上げて、無駄に会議をせず、意思決定を早くしているが、そのようなことも議会DXの一つかなと思う。ほかに、今までは紙や口頭でもらっていた市民からの情報をLINEを使って現況写真などを送信してもらい、すぐにその情報を市に伝えて改善してもらうなど、そういう使いかたもできる。今までよりスピードアップしてできるところも議会DXの一つで、いろいろな方向で活用できるのではと思う。
なお、ツールを入れても活用されなければ何の意味もなく、使われてはじめてDXが成り立つので、ヘルプデスクを用意するなど導入と同時にサポート体制をしっかりつくる必要がある。
10年ほど前に、箕面市の過去の地図のデジタルデータ化を提唱したことがあるが、古いデータを重ねていけば、ここはこういう地形だからこうだというように市民に説明できる。我々が施策を判断するとき、過去の経緯を調べることが非常に大事だと思うが、議会の議事録は今、平成何年からしかデジタル化できていない。デジタルデータを使って、我々が市民に理解しやすい方法で発信するというのがDXかと思っていたが、グループウェアでデータを共有することが果たして我々の求めるDXなのか。
回答
データをどのように保管するのか、デジタルデータをどのように保管するのかは非常に重要である。地図や水路のデータを積み上げるというようなことはDXでとても重要で、おっしゃることはズレていないと思う。世の中でDXと言われているものは、データがあることを大前提にしており、それに対してどういう付加価値を付けるかであって、市民がより見やすくなるとか、まちの開発計画に生かされるようになってトータルでDXの視点と捉えればいいかと思う。
議会も含め市役所には、ちょっと試しにやってみるという文化があまりない。議会DXを進めるに当たって結構課題になると思っているが、そうした違いにより、市のDXに関わる中で実際に苦労したことはあるか。
回答
(1) 民間では年度当初に予算化していなくても、新しい動きが出てきたらとりあえずベンチャーでやってみようとか柔軟にできることはある。行政機関は予算化して、しっかり段取りしてというところはあるが、組織にあった進め方でないと動いていかないので、民間でできることがなぜできないのかということではない。
(2) こんなチームでとりあえずやってみようとトライし、課題や解決策が見えてきて確認しながら進め、最終的に全速力で行きますという形がやりやすいが、市の動きだと、今から予算要求して始めるのは来年の何月からとか、半年くらい先になるので、スピード感が全然違う、本当ならもう終わってるよなということはある。
(3) DXの推進にはいわゆるDX人材、ある程度ITに明るい専門知識を有する人がいると進みやすいが、地方自治体では3~4年で職場を異動することが多いため、ジョブ型の雇用を増やさないとDXの専門人材が育っていかないと思う。
行政の仕事はあまり効率化を求めるというより、法に則って正確に行われているかを求めるべき。市民にきちんと説明できるのかという部分でツールとしてDXを活用すべきで、我々の業務の効率化に使うDXとに分けて考えるべきではないか。
回答
民間企業であっても法に則り事業を進めていかなければならないのは行政の仕事と変わらない。法に則ったうえで、業務をいかに効率化できるかというところでトータルのコストに影響してくる。トータルで使うべき税金が少なく済むための一つの手段がDXであると思う。
紙媒体をやめることで記憶に定着せず、逆に非効率になった経験がある。民間企業でもあえて紙を使う場面などはあるのか。また、コロナ禍の頃はオンライン会議が多く効率的な反面、コミュニケーションがまったく取れないことがあった。オンライン会議を活用する上で、コミュニケーションを向上させる手段を教えてほしい。
回答
(1) 企業でのペーパーレス化は、一個人というよりも組織としての効率化が大きい。例えば、会議の資料をデジタルデータで投影しながら全員で見るなどで、書き込みをしたければその人だけが印刷すればよい。自分自身は、今日、東京からスマホだけ持ってきて、新幹線やタクシー中でスマホで仕事をしていたが、そういうときと自分の頭を使いながら紙に書いて考え事をするときとモードを使い分けしている。
オンラインでのコミュニケーションは実際に直面している課題で、オンラインでは人間関係を作るのが難しく、最近は中途採用者の入社日に受け入れ部門のメンバーが立ち会ったり、その後ランチに行ったり、しばらく一緒にミーティングするなどしてなじんでもらっている。チームごとで状況が違うので、画一的なルールにすると逆に弊害が出てしまうため裁量としている。なお、ディー・エヌ・エーの経営会議は今年度から全員出社して対面でやっている。コミュニケーションを重厚にしたいときは対面で、適度に議論するときはオンラインでと使い分けするのが基本の形となっている。
(2) 紙印刷は禁止されていないが、個人個人の席ではなく保管場所がないため、一時的に出すだけで捨てるしかない。物理的な環境で制限をかけてペーパーレス化せざるを得ないようにコントロールしていく感じかと思う。
なお、個人個人の意見を尊重しすぎるとデジタル化が進まないというアンケート結果が出ている。両方の意見を尊重しながらも、どちらかに決める場合はリーダーシップが必要だと思う。
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