• ホーム
  • くらし
  • ビジネス
  • 観光
  • 市政

箕面市 > 市政 > 審議会・協議会・委員会 > 箕面市人権施策審議会 > パオみのお(精神障害者地域生活支援センター)移転反対問題に対する対応方策について

ここから本文です。

更新日:2016年6月22日

パオみのお(精神障害者地域生活支援センター)移転反対問題に対する対応方策について

~精神障害のある市民が地域で当たり前に暮らせるみのおをめざして~

はじめに

箕面で、精神障害者の地域生活を支援する施設の移転をめぐって、移転先の地域において反対運動が起こった。これは精神障害者に対する誤解や偏見に基づいており、基本的人権を尊重する憲法の理念に反し、人権に関わる重大な問題であるととらえ本審議会において議論を行った。その内容をふまえ、精神障害のある市民が地域で当たり前に暮らせる箕面としていくための提言として取りまとめた。

取りまとめに際しては、審議会全体会で議論したほか、本問題の重要性に鑑み専門的に調査・研究するため施設地域コンフリクト部会を設置し、議論を深めてきた。部会においては、移転反対運動を行っていた「地域の環境を考える会」(現在は解散)及び箕面市精神障害者家族会それぞれから事情・意見の聴取を行うべく出席依頼を行ったが、「地域の環境を考える会」からの出席は得られなかった。

【施設地域間摩擦】

精神障害者地域生活支援センターをはじめ各種福祉施設等が設置される際に、地域住民から設置をめぐって反対運動が展開されることがあり、その状況は一般に「施設コンフリクト」とよばれている。

施設コンフリクトは、「社会福祉施設の新設などにあたり、その存立が地域社会の強力な反対運動に遭遇して頓挫したり、あるいはその存立の同意と引き換えに大きな譲歩を余儀なくされたりする施設と地域との間での紛争事態」と概念づけられている。

(古川孝則・庄司洋子・三本松政之編「社会福祉施設-地域社会コンフリクト」1993年3月 誠信書房)

なお、施設が紛争を引き起こしているのではなく、開設予定施設と地域住民との間での関係性であり、また、双方が相対峙する「争い事」というよりも、互いの接点接触を見いだす「擦れ合い」の局面であるというとらえ方をするべきと考える。

従って「施設と地域との間の摩擦」というほうが適切であると考え、以下、本提言書では、「施設地域間摩擦」と表記することとする。

【パオみのお(精神障害者地域生活支援センター)】

地域で生活する精神障害者の日常生活の支援、日常的な相談への対応や地域交流活動などを行うことによって、精神障害者の社会復帰と自立、社会参加の促進を図るための施設である。

パオみのおは、箕面市が設置主体となり、箕面市精神障害者家族会みのお会が運営している。

事実経過の概略

  • 平成14年夏頃からパオみのおが移転先を探す。
  • 12月初、移転先建物賃貸借契約締結。改装工事着手。
  • 1月15日、この改装工事が地元の不安を惹起していることが判明。パオは月末までに近隣30軒に個別説明実施。以後、改装工事は中断。
  • 1月21日、地元5名、ライフプラザへ来庁。
    • (1)不特定多数の市民が多い桜井は場所が不適当。
    • (2)付属池田小学校のような事件が起きる心配がある。
    • (3)秘密に手続が進められており、事前説明がなかった。
    • (4)市の委託事業であるのに団体の指導に問題がある等の理由により、計画を白紙に戻すよう主張。
  • 2月3日、地域の環境を考える会代表他1名が来庁、2月6日にはコミュニティセンター南小会館に出向き、対応協議。行政から現地見学会的説明会、純粋な事業説明や保健所長による精神障害理解促進講座等の前向きの説明会等を提案。
  • 2月10日、移転反対ビラを撒かれたことを確認。重大な人権侵害行為であることを指摘し、抗議。以後、駅ビラ・署名活動・看板と地域の環境を考える会の活動がエスカレートしていくが、その都度、チラシ・署名活動の文章表現が事実に反すること、また人権侵害にあたることを指摘し、抗議。
    本市は、保健所等と協調し、箕面市人権啓発推進協議会や箕面市障害者市民施策推進協議会に報告し、対応を協議しながら、精神障害者市民への影響を最小限に留めることを第1の課題として事態の早期収拾に努めるとともに、事業の理解を深めるための催し等の早期開催を図ることを確認。
  • 3月24日、コミュニティセンター南小会館において移転説明会を開催。150名程が参加。
    2月中旬、これとは別に、予定建物が無届けの建物であることが判明。本市は、適法な建物でなければ事業委託できない方針を確認。家族会は、違法状態の回復方法について、家主を含めて各方面と調整を継続したものの、最終的に予定建物への移転は断念した。家族会は、このような建物の瑕疵により、やむなく現予定建物への移転は断念。移転計画自体は継続し、桜井地区を含む箕面市全域を対象として新たな場所を探す方針。
  • 7月22日、南小学校体育館において2回目の説明会を開催。150名参加。
  • 9月30日、啓発パネル展示(10月24日まで)広報紙による啓発。9月号:相談事業の特集でパオを紹介。10月号:施設コンフリクトの特集。
  • 10月23日、南小コミュニティセンターにおいて家族会と地元有志との懇談。

1. 問題解決のための基本姿勢

「施設地域間摩擦は起きる」ことを出発点に、「市民と地域社会を信頼する」ことを根底に据えて「精神障害者地域生活支援の事業を進める」ことを表明する。

精神障害者に関する教育、啓発を地道に展開するとともに、施設地域間摩擦における誤解や偏見には適切に毅然とした対応をとる。

以上のことを進めていける力を培う。

  • (1)「施設地域間摩擦は起きる」ことを出発点に
    「まさか箕面において精神障害者の生活支援施設を地域から排除するようなことが起きるとは…。 しかも看板やチラシ、署名といった形で公然と行われるとは想定もしていなかった。」
    パオみのおの移転反対運動が起こってからよく聞く感想である。
    しかしマスコミの犯罪報道やそれに対する市民の反応をみるまでもなく、精神障害のある市民を「何するかわからない、危険でこわい」ととらえる意識は、市民の中に根強く存在している。そのことは、移設反対運動が起きる前から十分に知っていたはずである。いわば移転反対運動はわかりやすい形で市民の意識、考えを表わしただけのことである。地域のことに無関心であったり、本音を覆い隠している場合よりも、自らの意見をいい、活動するエネルギーは、理解者へと変わったときには大きな力となるであろう。
    精神障害者は、これまで地域で暮らしていなかった。地域での暮らしを進めていこうと、やっと国の政策も転換されてきたところである。地域で暮らしていなかった精神障害者が身近なところに「出現」する となると、これまで精神障害者を知らなかった市民にとっては不安をかき立てられる。マスコミ報道などで煽られている「こわい」イメージが膨らむ。施設設置を含めて精神障害者の地域生活を実現していく過程では地域住民との軋轢、摩擦は必ず起きる。 このことを出発点におかないといけない。
  • (2)摩擦を避けず「堂々と精神障害者地域生活支援施設は設置する」
    市は「精神障害者地域生活支援の事業を進めること」を表明する。
    目的は施設設置ではなく、精神障害者の地域生活の実現にある。その過程は、たやすいものではなく様々な課題、軋轢がある。施設地域間摩擦もその道程の一つであり、地域に根ざして事業を進め生活を営んでいくのであれば、摩擦を避けるのではなく、堂々と設置し摩擦の中、説得、対話、交流を積み重ねていくことが大切である。
    そのため、市は「精神障害者地域生活支援の事業を進めることを表明する」ことが求められる。 行政の対応として、「社会福祉施設設置にあたっては事前説明をする義務はないので、ことさら説明しない」ということでは市民からの不信感を招くおそれが多分にある。将来にわたってその地域に根ざして事業をしていくのであれば、精神障害者の地域生活支援の事業を進めることを住民に「表明」をすることが大切である。「こそこそと秘密裏に進められた」と誤解されないように、「堂々と当たり前のこととして設置する」ことを表明する。
    「事前説明責任」という責務の範疇ではなく、行政として「地域生活支援」を推進するということを具体事業をもって表明する。
    「施設設置は最大の啓発機会」である。なぜなら一般論、総論としての「福祉・人権の問題」ではなく、まさに身近なところでそれぞれの考え方や態度が問われるからである。「表明」は啓発の一環である。
  • (3)「市民と地域社会を信頼する」ことを根底に据えて人は理解し合える。
    知らない人どうし理解し合えといわれてもできない。ましてや相手が「何をするかわからない、こわい」とされている人であればなおさらのことである。こういった、知らないが故に抱かれる差別意識は、なにも精神障害に対してだけではない。被差別部落や在日外国人の人たち、あるいはHIV感染者やハンセン病回復者の人たちなどに対しても同じように存在している。しかし、正しい知識を学び、偏見を払拭し、互いに知り合い交流することを通じて、人はお互いに理解し合える。
    地域社会は懐が深い。
    そもそも地域社会は、多様な状況にある市民、社会的支援を要する市民、それぞれ異なる生活経験や考え方をもつ市民によって成り立っている。逆にいうと、いかにすべての市民が互いに認め合いながら暮らしよい地域社会を作っていくか、その努力を積み重ねていくことが市民の役割の一つであるといえる。これまでも、そのような営みの中で地域社会が形づくられてきた。
    事実、施設地域間摩擦は全国の各地で発生しているが、地道で着実な取り組みの中で、施設が設置され地域住民との交流と相互理解が進んでいる事例も決して少なくない。
    誰をも排除しない地域社会、互いの多様性を認め合い支え合える地域社会をどう実現していくか。そのための知恵と力は市民と地域社会にこそある。摩擦の向こうに地域社会の未来がある。
  • (4)誤解や偏見には毅然とした対応をとる
    施設設置に対する反対運動は、時として精神障害者に関しての間違った知識や偏見に基づいて行われ、その誤解や偏見を拡大、助長することがある。その場合は毅然とした対応を図ることが必要。
    法制度上、施設地域間摩擦に的確に対処できる状況にはないが、国に法整備を働きかけるとともに、市として取りうる方策について研究する必要がある。
  • (5)以上のことを進めていける力を培う
    以上のことを進めていくためには、それを裏付ける力が必要となる。残念ながら、箕面には十分な蓄積がないといわざるを得ない。そのため、真摯に、公務員の研修、教育啓発の推進、事例の研究、政策研究・政策形成を行っていかなければならない。併せて、的確迅速に対応できる体制を整備することが必要となる。

2. 本事象のとらえ方

反対根拠が精神障害者に対する誤解と偏見に基づいており、箕面市人権宣言等の精神にも反し人権侵害に関わる重大な問題である。

精神障害者が地域で当たり前に暮らしていくための条件が整っていない。

  • (1)人権侵害に関わる重大な問題
    なぜ人権侵害に関わる重大な問題ととらえるのか。
    1. 権利の基本原理に照らして
      「すべての人間は、生まれながらにして自由かつ平等である」との理念は近代社会における基本原則である。憲法においても、基本的人権は「侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」としている。憲法第13条では生命、自由及び幸福追求の権利、同第22条では居住・移転の自由を保障しており、精神障害があることを理由にして、その権利の実現を阻んではならない。
      精神障害のある市民が安心して社会生活をおくれるように支援する地域施設は、社会に必要な生活環境基盤のひとつである。精神障害に対する予断と偏見に基づいて、その設置を阻むことは、地域への参加機会と生活の場を奪うことにつながり人権侵害に関わる重大な問題である。
    2. 根拠が誤解と偏見に基づく
      チラシや口頭で、移転反対理由としてあげられている「精神障害者は、犯罪を犯し、近隣住民の生命、財産の安全確保が成り立たない」との考え方は、統計などからみても精神障害者に対する誤解であり、マスコミによる犯罪報道などによって助長されている偏見である。
      また、要望書であげられている「(当該)施設を開設することは周辺の環境を著しく乱すものと判断し当地での開設に反対する」という判断は、パオみのおが現在開設している場所で地域住民に支えられながら活動してきた実績からみても誤解であり、精神障害者が利用する施設に対する偏見といえる。
      なお、施設開設反対一般を否定しているわけではない。例えば、精神障害者を「隔離」するための施設開設をめぐって反対を表明するのであれば意見に合理性が認められると考える。
    3. 看過し得ない社会的影響を及ぼす
      チラシを配布し看板を掲出することによって看過し得ない社会的影響を及ぼしている。
      現実のこととして地域社会に暮らしている精神障害のある人たちが、つらい思いをしたり、中には外出できなくなるなどの苦痛を訴えている。
      地域の住民にとっては、それまで漠然と抱いていた精神障害者への不安感などが署名に応じることによって確固とした「排除する意識」へと変わったおそれがある。
      また、子どもをはじめ不特定多数の人たちがチラシや看板をみることによって、「精神障害者=こわい存在」という誤った精神障害者のとらえ方を抱くことにつながりかねない。
  • (2)箕面市人権宣言、箕面市人権のまち条例及び関係法に反する
    にんげんの街みのおを育てることを明らかにした箕面市人権宣言の精神に反し、平成15年(2003年)4月に施行した箕面市人権のまち条例のめざすものにも相容れない。
    精神保健福祉法第3条では国民の義務として「国民は、精神的健康の保持及び増進に努めるとともに、精神障害者に対する理解を深め、及び精神障害者がその障害を克服して社会復帰をし、自立と社会経済活動への参加をしようとする努力に対し、協力するように努めなければならない。」と定めている。本事象は、障害者基本法第5条、精神保健福祉法第3条の国民の責務、義務にも反する行為であ るといえる。同時に、この問題を放置することは、障害者基本法第4条、精神保健福祉法第2条の地方公共団体の責務、義務にも反するものといえる。
  •  (3)精神障害者が地域で当たり前に暮らしていくための条件が整っていない
    現在、建物の瑕疵によって当該建物への移転は断念されたところであるが、問題が終わったわけではない。
    なぜなら、「建物の瑕疵で移転できない」ことが今回の事象の本質ではないからである。つまり、地域住民の意識が変革されたわけでもなく、また、他の地域住民の精神障害者市民に対する意識も顕在化していないだけで根強い偏見があるものと考えられる。精神障害のある市民が地域で当たり前に暮らしていくための条件も整っていない状況のままである。

3. 本事象の背景

精神障害者を危険な存在としてとらえる意識

様々な課題をもつ多様な人々の暮らす地域社会における相互尊重、共助の社会連帯意識の希薄化

精神障害者の社会生活支援政策の立ち遅れ

  • (1)精神障害者を危険視する意識と地域コミュニティ
    精神障害者を危険視し身近なところから排除しようとする考えが本事象の発生を許した根底にある。
    そして、その背景として、精神障害者市民の人権に関しての教育や啓発の取り組みの弱さがあげられる。逆に、マスコミ等の報道によって事件の被疑者の通院歴を紹介するなどして「精神障害者=こわい・何をするかわからない」という意識が助長されている。
    様々な生活スタイル、生活上の課題をもつ多様な人々が生活している地域社会での暮らしにおいては、互いを尊重しあい暮らすという社会連帯意識が大切である。
    逆に、同一であること、均一であることが「よいこと」とされ、人と「違う」ことが認められないような風潮がみられる。
    本事象で、移転反対看板設置や署名が「広がった」のも一部の人たちの精神障害者市民に対する誤解と偏見に基づく呼びかけに対して異論や疑問を差し挟めずに、自治会や近隣の「つきあい」を損なわないようにと同調してしまっている人も少なくないと考えられる。
  • (2)精神障害者施策をめぐる状況
    1. 精神障害者の法的位置づけ
      精神障害者を危険視し身近なところから排除しようとする考え方が生み出され定着してきた背景には国の政策の歴史がある。
      平成5年(1993年)に制定された障害者基本法によってはじめて精神障害者が「医療の対象」としてだけではなく、「障害者」であることが明記された。それをうけ、平成7年(1995年)には精神保健法を 精神保健福祉法として改正し精神障害者への福祉施策を法律上に位置づけ、目的に「自立と社会経済活動への参加」が加えられた。それまでは、精神障害者は治安と治療の対象として位置づけられてきたといえる。精神保健福祉法では、市町村による社会復帰施設設置を初めて規定したものの、実質は都道府県が役割を担ってきた。
      これらのことから、精神障害者の社会生活支援に関わる施策は大きく立ち遅れた結果、精神障害者が安心して暮らすことができるような地域社会とはならなかった。地域住民にとっては、精神障害者のことを身近に知る機会が奪われることとなり、精神障害者に対する誤解と偏見が助長されることとなったのである。
    2. 地方分権と市町村の役割
      地方分権の流れの中、平成11年度(1999年度)に精神保健福祉法が改正され平成14年度(2002年度)から、精神障害者のホームヘルプ事業など居宅生活支援事業が制度化されるなど、社会復帰の一層の促進と在宅精神障害者に対する福祉事業を市町村が中心となって推進していく体制が進み出した。
      市町村としては、施策の実績がなく、また、連携すべき保健所の統廃合の動きの中、住民の精神障害者に対する理解が十分でないもとで、精神障害者の福祉施策の重要な役割を担っていくこととなった。いわばこれまでの「遅れ」を取り戻し、精神障害者市民が当たり前のこととして安心して生活できる地域社会をめざして、市町村における精神障害者政策論の確立と実践が望まれるところである。

以下、施設地域間摩擦を解決し、精神障害者に対する各種施策を進めていく観点から、本事象における問題点等について述べていく

4. 行政における問題点

  • (1)行政の姿勢と立場性
    精神障害のある当事者自身の意志の尊重と施設移転の実現が最大限に優先されるべき事柄であるのは当然のことながら、精神障害者市民に対する露骨な排除思想の表れに対して行政としての取り組みは十分であったのかという疑問が残る。
    施設地域間摩擦の問題は、主として施設と地域住民の問題としてとらえられがちであり、摩擦解消に向けた行政の役割(積極的な関与、リーダーシップ)が希薄であったといえる。
    確かに、運営が民間組織であることから行政が前面にたちにくい面があったが、委託という手法により支援をはかっていることなどから、より積極的な行政役割の発揮のしかたがなかったものかと悔やまれる。
    今回の人権侵害事象に対する行政の認識の甘さや関係部局間の連携のまずさなどにより、行政として迅速な対応ができず、取り組みについても極めて不十分であったといわざるを得ない。また、一部行政として「中立的な立場」に見えるような姿勢が見受けられた。
    このことにより、精神障害のある当事者や家族が、心を傷つけられ、外出できなくなるなど生活上の困難も助長されたばかりでなく、子どもをはじめ地域住民の精神障害への偏見が助長されたといわざるをえない。
  • (2)人権啓発の取り組み
    今回の問題は、たまたま顕在化しただけであって、市民意識のなかには精神障害のある市民を危険視し、排除しようという意識が根強く存在している。
    平成6年度(1994年度)からの「みのおNプラン(障害者市民長期計画)」において指摘しているように、精神障害者問題に関する人権啓発の遅れは早くから認識されていたにもかかわらず十分な取り組みがなされてこなかった。
    今年度実施されている「箕面市民の人権に関するアンケート調査」結果をみても、3人に1人が「精神障害者は何をするかわからないので、自分の住む地域に、精神障害者の社会復帰施設を設置してほしくない」と回答している。
  • (3)施設開設時点における説明のあり方
    国においては、国庫補助対象福祉施設建設時の「住民同意」条件が結果として建設を停滞させてきたという反省にたち、平成11年に条件が廃止された。
    しかし、建築主による「住民同意」条件を廃止するだけでは、単に「手続き上、建設できるので建設する」ということにとどまる。地域住民が施設建設を受け入れるとは限らない。つまり、「住民同意」条件はあくまで「停滞」助長要因であって、施設地域間摩擦を発生させないためには、地域住民の精神障害者市民に対する理解促進が必要である。
    したがって、建築主のみに課せられていた「住民同意」条件を単に廃止するだけではなく、行政も連携して積極的に住民合意を形成することに取り組む方向で検討すべきと考えられる。
  • (4)掲出等への対応
    1. 看板、ビラ等への対処
      「精神障害者施設開設反対」の看板が掲出された。
      市道等、市の管理する財産範囲については手続きをとり撤去されたところである。
      しかしながら、民家壁面等に掲出された看板類については、市から掲出者に撤去の要請を行いつつも、実際には撤去をさせることができていない。代表者だけでなく掲出している家庭全体に働きかけをするなど様々な対応をとる必要があったのではないか。
      国府に対して法的な整備を求めるとともに、市独自に対処の方法がないか検討をするべきである。
    2. 署名回覧への対処
      自治会等を通じて「反対」署名が回覧された。自治会はあくまで自主的な集まりではあるが、いかなる内容であっても行政は関わることはできないのかといった点についても検討が必要である。
      また、市へ提出された署名に対する対応についても単に受け取るだけでよいのか検討の余地がある。
  • (5)人権に関わる問題への対応体制及び市民の相談・告発窓口の整備
    施設地域間摩擦の発生が想定されていなかったのではないか。人権尊重の観点からみて重大な問題が発生したときに迅速な対応を図れるよう体制を整備すべきである。
    併せて、人権を侵害された市民、見聞した市民が相談をし、問題提起をできる行政の窓口を整備するべきである。
  • (6)人権擁護委員制度、法務局(人権侵犯事件調査)の活用
    市のみの権能、努力だけでは解決が進まない場合、人権擁護のための国の機関である人権擁護委員制度や法務局が行う人権侵犯事件調査等の制度を活用し解決を進めていく必要がある。
    なお、現行法令では、人権侵害を規制し救済できる方策は極めて限られているのが実情である。人権侵犯事件調査制度も万能ではなく、本事象の解決も確実なことではない。しかしながら、少なくとも、地域において実際に人権侵害事象が生じ解決が図れない状態であり、法整備も含めた対応が切実に求められていることを国、法務局に認識させる意味からも、法務局等への働きかけを行っていく必要がある。

5. 市民団体の課題

パオみのおの移転反対問題が発生したとき、障害者団体をはじめ各種の市民団体も問題解決を望んだ。

しかしながら、普段からのつながりが十分ではなかったことやパオみのおの意志を尊重するあまり、互いに緊密な連携がとれていなかった。今後は、各種団体がより密接に日常的な連携関係を結んでいくことが求められよう。

6. 行政の取り組むべき課題

以上のことから行政が取り組むべき課題をあげる。

 

市として見解をとりまとめて公表する。

相談事業をはじめとした精神障害者施策を積極的に推進するとともに、開設時点の「事業実施表明」などを含む「対応基本方針」を確立する。

地域に根ざした教育・啓発を全市的に、地道に多様に展開するとともに人権相談、救済に関わる体制の整備を進める。

公務員研修、政策研究を通じて、精神障害者政策推進力の養成と組織体制の整備連携を進める。

  • (1)市としての見解取りまとめと公表
    建物の瑕疵のために予定建物移転から撤退することとなった。これは決して問題が解決したことを意味していないが、現時点において本事象について市としての見解を取りまとめ、広く市民に公表する必要がある。
    なぜなら、精神障害のある市民に対する偏見や差別意識を取り除いていく必要があるからである。今後も、当該地域周辺を含め箕面市内のいずれかの場所に精神障害者地域生活支援センターをはじめ各種の施設などが開設されていく。そのときに同じ轍を踏むことなく、地域住民の理解の下に開設され ることを確保していくためには、現時点において市として本事象をどのようにとらえるのかを整理し、広く市民に公表する必要がある。
    市は、施設地域間摩擦を許さないことを毅然と示すことによって、傷ついた人たちも少しは心を癒され、勇気づけられるであろう。また、精神障害のある市民への誤解から施設移転に反対していた市民が立ち止まって考え直すきっかけともなろう。
  • (2)施設開設に向けて
    1. 開設時点の「事業実施表明」
      施設開設時における説明のあり方について整理をする必要がある。
      過去の反省から、現在では、福祉施設建設時の事前説明義務や住民同意条件はない。しかし義務がないからといって説明しなくて地域と良好な関係が築いていけるだろうか。地域で暮らしていく、地域に根づいていくという観点から見ても、義務としてではなく、事業を進める意志として、また、啓発の一環として、地域へ知らせることが必要ではないか。
      つまり、施設地域間摩擦は必ず起こるものととらえ、また、将来にわたって当該地域に根づいて事業を継続していくのであれば、行政の意志として住民に「事業実施表明」をすることが必要と考える。
      (義務、責務としての「説明」との混同を避けるため、意志表示としての「表明」という表現をとることとする。)
      その際、設置や運営における主体(市、社会福祉法人、NPO法人、民間団体等)、補助、支援、事業委託などの官民の関係性、国、府や医療機関との関係など、いくつかの組み合わせがあり、それぞれに適した整理が必要となろう。
      また、当該施設の事業目的によっても対応の違いが考えられる。例えば、相談業務等を取り扱うのであれば、広く市民に知らせた方がよいであろうし、逆に、グループホームなどは、「住む家」であるので、そもそもどこに誰が住んでいるのかを広く知らせる必要はなく、「向こう三軒両隣」の範囲でいいと考えられる。
      精神障害者市民関連の施設以外にも、身体障害者市民、知的障害者市民、高齢者市民などに関連する社会福祉関連施設においても、施設地域間摩擦が発生していたり、また、今後の発生が予測できる。「事業実施表明」について、包括的に検討することも必要となろう。
    2. 「施設地域間摩擦対応基本方針」の確立
      これまでの入院治療中心の施策から、地域社会生活支援の施策の充実へ取り組みが広がっていくなかで、今後とも、地域との軋轢、摩擦の発生が予測できる。従って、施設地域間摩擦を未然に防止し、発生したときに的確に対応できるよう「事業実施表明」のあり方を含めて基本方針を検討しておく必要がある。
      たとえば、施設地域間摩擦に対する市の基本姿勢、発生が想定される施設建設情報の事前把握、相談窓口の整備、機動的な庁内調整対応体制の整備、対応方策の検討・実施、市民、関係機関・団体との連携などについて検討しておく必要がある。
      これら 基本姿勢、方針については、人権施策基本方針や障害者長期計画など関連する各種の基本計画等に位置づけておく必要がある。
  • (3)精神障害者施策の推進
    1. 総論
      精神障害者が福祉施策の対象として法的に位置づけられたのも、市町村が施策の役割を果たすよう位置づけられたのもわずか数年前のことであり、まだまだこれからのことといえる。
      平成14年度(2002年度)から精神障害者の福祉サービス利用相談等が市町村実施となるのと同時期に本事象が発生したことは象徴的な事柄である。つまり、これまで都道府県等が広域で担ってきた取り組みが、地域社会に最も近い市町村が、いかに精神障害者の地域社会での生活を支援していくのか、そして、地域社会が精神障害者を地域の一員としていかに包み込んでいくのかが同時に問われているのだといえよう。
      平成16年度(2004年度)からは、新たな障害者長期計画が実施に移されている。地方自治の真価が問われるという観点に立って、相談、在宅支援、地域生活支援をはじめとした精神障害者施策を着実に実施し、精神障害者が当たり前のこととして暮らせる地域社会づくりを進められたい。
    2. 精神障害者相談事業の重要性
      とりわけ、重点事項として相談体制の整備があげられる。
      精神保健福祉法の改正により、市町村は精神障害者の身近な生活について相談・助言を行うことや、各種社会復帰施設や事業の利用にあたっての斡旋や調整の機能を担うこととなった。(市町村 はこれらの業務を精神障害者地域生活支援センターに委託することができる。)
      病気であることを認め治療を受けるまでにも困難があり、初期段階も回復期も、気軽に相談したり話し合えたりする相談機関は極めて重要な存在といえる。
      従来は、保健所が相談事業を担ってきたが、保健所の統廃合や業務の市町村への移管が進む中で、専門的知識とノウハウのある相談体制が確立できていないと考えられる。
      施設地域間摩擦で、市が設置主体であるからこそ開設が実現した事例がある。相談事業の重要性に鑑み、設置場所の選定や確保における行政役割を整理する必要があると考えるので検討されたい。
      ただし、当事者であり実績のある民間団体が主体となるからこそ地域住民の理解が得られる事例もあるので一律に役割を固定する必要はない。
  • (4)教育・啓発の強化
    本事象が発生した地域の住民だけが精神障害のある市民への誤解や偏見を持っているのではなく、箕面市内のいかなる場所であっても起こりうる事象であると考えられる。
    また、「様々な人権課題があるのでどの課題もバランスよく」「いろいろな考え方の市民がいるので偏らずに」といった妙な配慮ではなく、まさに箕面市内で発生している事態であり、重点的に取り組むべき教育啓発課題といえる。
    実施にあたっては、これまでの蓄積や理論整理が乏しいことを正直に認め、本事象を丁寧に掘り下げ、教材化する中でこそ、箕面市の実情にあった生きた理論整理と実践が進められる。
    教育・啓発にあたっては、「精神障害者は怖くないからどうぞ受け入れて下さい」といった、いわば「お願いする」ような内容に終始するのではなく、対象、内容、手法などにおいて多様で的確なものとなるよう研究され、実践される必要がある。
    たとえば、内容では、精神病といわれる病気の理解、病気からくる生活上の様々な困難(障害)、医療や福祉、社会的支援による病気や障害の軽減・除去などの基本的な理解から、「精神障害者は危険だ」などの偏見を克服していくもの、そして、これからの市民と行政の取り組みのあり方や、地域社会の有り様を考えていくものなどがあげられる。何よりも、精神障害のある当事者や家族の思いが大切である。
    市の広報紙はもとより、民間団体の広報媒体を含めて、様々な方法、機会をとらえて思いを紹介する必要がある。
    対象についても、人権に理解がある層を集めて「啓発できた」と安心するのではなく、反対者に対してねばり強く働きかけていく必要がある。その際、「手続き論」「住民が危険にさらされる」「誰が責任をとるのか」など、定式化した論法が想定されるので、他の事例研究などを通して理論整理をしておく必要がある。また、地域に根ざした形での人権を考える機会をもっと豊富化する必要がある。
    学校園については、平成12年度(2000年度)に策定した箕面市人権教育基本方針に基づき設置された人権教育推進会議の情報紙「はじけるこころ」で特集記事を組む等「こころの病」学習プランづくりに各学校園が取り組めるよう、市内教職員の人権教育研究団体等と連携しながらカリキュラムの開発支援を進める必要がある。
    そして市は広い視野をもって様々な取り組みを検討することを忘れてはならない。たとえば障害児教育においては、子ども達はみな違っていて当たり前であるという前提に立ち、障害のあるなしという枠にとらわれず、すべての子どもたちを包み込む教育体制を確立しようとする取り組みが世界的に進んできている。この考え方は教育の場だけでなく福祉の分野においても広がりつつあり、市はこういった状況を十分認識しておく必要がある。
  • (5)人権相談、救済について
    1. 人権救済の考え方(被害回復、ペナルティ・規制、相互学び合い)
      「救済なきところに権利なし」といわれるように、救済制度が効力を発揮してはじめて人権ということができる。救済については、被害回復、ペナルティ・規制、相互学び合いの3側面から考える必要がある。
      【ペナルティ・規制】
      現状では、人権侵害を規制する法令が整備されておらず、人権を侵害しても何らの罰則もなく、対抗すらできないことが少なくない。
      家屋等私有財産上の看板については、当該看板前の公有地に警告看板を掲出することや、放置自転車に貼るような警告ステッカーを添付するなど、市としてできる対応策を案出することができないか検討が必要である。
      また、ペナルティを科すことについては、事前にルールを定めて周知しておく必要がある。
      説得や啓発を積み重ねても、人権を侵害する言動を中止撤回しない場合、まず口頭注意、文書での警告、改まらない場合に氏名の公表等の手続きが考えられる。
      あわせて、差別を禁止し規制する法律の整備を行うよう国に対して働きかけることが求められる。とりわ け施設地域間摩擦は、全国的にみても発生しており、その解決をすすめる法的整備がなされるべきである。
      【相互学び合い】
      ペナルティ・規制の整備は必要ではあるが、罰することが最終の目的ではなく、被害者の思いを受けとめ、差別を深く反省し、自己変革を図っていくとともに、人権課題の解決を図っていく立場にたってもらうことが目的といえよう。その意味から、人権侵害事象を契機に、関係者が相互に学びあう機会を設けることが必要となってくる。
      【被害回復】
      救済の一番の目的は被害の回復にある。しかしながら、金銭的物理的被害であれば回復することもできようが、心理的精神的に受けた被害については回復することは容易ではないといわざるを得ない。そして、精神的な被害の回復は、最終的には被害者本人の力によらざるを得ない。
      ただ、決して被害者の側に問題があるのではないことが明らかにされ、人権侵害行為に対し何らかのペナルティ・規制がかけられ、相互の学び合いの中で、ひとりでも理解者が増えていくならば、それは精神的被害の回復にとってよい影響を及ぼすであろう。
      また、人権侵害の問題を糧として、人権尊重のための更なる取り組みを1歩でも前進することにつなげていくことが、被害者の苦しみや悲しみを「ムダではなかった」として少しでも和らげることにつながるであろう。
    2. 救済制度の具体化に向けて
      本審議会の設置根拠でもある箕面市人権のまち条例の検討過程においても、人権救済制度の具体化について議論となった。国の人権救済に関わる法整備の動向との整合性確保や、私人間への関与権限の問題などまだまだ検討を深める必要のある課題があるが、何らかの具体化の検討を進めるべきである。
      たとえば、人権侵害行為であるという市民からの申立について調査・審議し、人権侵害行為であると判断した場合には相手方に権限をもって対処するといった、行政だけで担いきれない場合の救済処置とこれに対応する仕組みづくりについて、本審議会の在り方とも照らし合わせて検討する必要がある。
    3. 相談窓口
      問題点で指摘したとおり、市民が人権侵害を受けたと思ってもどこに相談すればよいのかまだまだわかりにくいのが現状である。市民からわかりやすい相談窓口の整備が求められる。
  • (6)政策推進力の養成と組織の整備連携
    1. 公務員研修、事例研究
      精神障害者施策が市町村の業務となった歴史も浅い、担当職員は当然のこととして、理事者、議員も含めてすべての公務員が研修を修め、そして市町村自治体におけるこれからの精神障害者政策を議論し進めていくことが必要である。
      施設地域間摩擦は、箕面市だけで発生している事象ではなく、以前から各地で発生している。撤退を余儀なくされた事例もあれば、開設が実現し地域との良好な関係を築いている事例もある。また、精神障害者の「隔離・治療」から「地域社会復帰・生活福祉」へという政策の転換からみても、今後も各地での発生が予測される。
      それぞれ歴史的経緯や地域の実情が異なるので、そのことをふまえながら箕面市に適したように学び取り、政策研究、政策理論の確立、施策の実践につなげていく必要がある。
    2. 対応庁内体制
      本事象のような事象が発生した場合の迅速な対応を図ることのできる庁内体制を整備しておく必要がある。
      全庁をあげて取り組む課題ではあるが、とりわけ、人権行政の総合調整及び実施部局である人権文化部、精神障害者福祉施策の実施部局である健康福祉部、開発指導・まちづくりの担当部局である都市整備部、教育と生涯学習の部門である教育委員会が主体的に、かつ、連携を図りながら取り組みを推進していくことが求められる。
    3. 関係機関・団体との連携
      市だけの対応では解決し得ない場合、人権擁護委員、法務局等の国、府の関係機関との緊密な連携を図るとともに、人権問題に関して取り組んでいる団体、NPO等との連携が図れるよう日常からの連携を深めておく必要がある。

終わりに

審議会の場において議論を行い、市が取り組むべき課題を本提言にとりまとめた。精神障害者施策が市において取り組まれるようになって、まだまだ日が浅い中ではあるが、本提言の趣旨を真摯に受けとめ、市民と協働した取り組みの中で、課題の解決を着実に進めていただきたい。

よくあるご質問

お問い合わせ

所属課室:人権文化部人権施策課 

箕面市西小路4‐6‐1

電話番号:072-724-6720

ファックス番号:072-724-6720

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

質問:このページの内容は分かりやすかったですか?

質問:このページの内容は参考になりましたか?

質問:このページは見つけやすかったですか?